【アンティーク入門:Vol.4】陶磁器絵付けで、最も価値の高い色とは?

軽井沢塩沢のアンティーク カフェモーニングベルリネッタ

 

軽井沢のアンティーク雑貨・家具ショップのベルリネッタです。

 

ベルリネッタではヨーロッパを中心に直輸入したアンティーク家具や食器・雑貨等を取り扱っており、御来店いただくお客さまによりお買い物を楽しんでいただけるよう【アンティーク入門】と題したブログを連載しています。

 

先日の記事では >>>【アンティーク入門 vol.3】ではヨーロッパの各国における陶磁器のルーツ についてご案内しました。

 

 

今回のテーマは......「陶磁器絵付けに使われる色」。

 

陶磁器の絵付けには様々な顔料が用いられますが、「王様の色」「女王様の色」とも称される、最も価値の高い色は何色だと思われますか?

 

 

 

その答えは......「瑠璃色」つまり濃い青と「マロン色」と言われる深い赤。この2色が最も価値の高い色といわれています。

 

その理由を紐解くには、まず陶磁器絵付けの焼成方法について知っておく必要があります。陶磁器絵付けは高温焼成のために様々な制約があり、焼き物独特の世界がそこにあります。

 

 

「上絵付け」とは

 

上絵付けとは......

釉薬をかけて本焼(白磁器)あるいは釉焼(ボーンチャイナ)した後の白生地に、絵付けをする手法です。

 

焼成温度が比較的低い(800~900度)ので多彩な色使い、自由な表現が可能。その反面、釉の上に絵具があるため、侵されたり、剥がれたりすることがあります。

 

アンティーク食器で人気のあるマイセン、セーブルなどは上絵付けです。

 

 

「下絵付け」とは

下絵付けとは、素焼きした生地の上に絵付けする手法です。

釉薬のかかったツルツルした面に描かれているのが上絵付け、釉薬をかける前のざらざらした面に描かれるのが下絵付けです。

 

下絵付けでは、絵具が釉薬の下になり、薬品におかされたり長期間の使用で絵がはげたりすることはありません。

その反面、上絵付けよりもグッと高温で焼成する(1300度~1450度)ため、発色の制約が多くなってしまいます。

 

イングレーズ(シンクイン)とは

イングレーズ(シンクイン)とは、焼き上げた白生地の上に絵を付けるという点では上絵付けと同じですが、その後釉薬が軟化するほどの高温(白磁器1250度〜1450度)で焼成し、釉薬の中に絵具を沈み込ませる技法です。

 

大倉陶園のブルーの製品に多くみられる、釉薬に滲んだような表現の絵付けはイングレーズ焼成です。

下絵付け違い、釉薬と馴染むのが特徴。(下絵付けほどではないものの)高温焼成のため発色に制限があります。

 

 

では、なぜ「青」と「赤」が最高の色と言われるのでしょうか?

 

ーーコバルトブルーは「王立セーブル製陶所」で開発され、他では使えない高貴の色だった。

 

 

 

「青(瑠璃色)」は、コバルトが原料。より鮮やかでツヤのある美しい青を出すには1200~1400度以上の高温で焼く必要があり、下絵付けやイングレーズ焼成が適しています。

 

コバルトブルーは1700年代にフランス・パリ東端に創られた王立の「王立セーブル製陶所」で顔料として初めて開発され、「国王の青」と呼ばれるほど、他では使えない高貴な色としても知られていました。

 

そのためフランスのセーブル、また日本の大倉陶園の作品にも、この青(瑠璃色)が多く見受けられます。

 

大倉陶園では「岡染(おかぞめ)」という手法(白い生地を1460度で焼き染付けをして、再度同程度の高温で焼成する)により、柔らかく深みのある青をだしています。

 

ちなみに、以前のブログでもセーブルの青について記事にしています。

▶︎▶︎▶︎「国王の青」について

 

 

 

 ーー赤(マロン)は含金色。そもそも原材料が高価!

 

 

赤(マロン)は、錫に金を混ぜて作られた顔料で、上絵付けで焼成するときれいな深い味わいの赤になります。

 

つまり赤(マロン)は含金色。高価な金を混ぜるので、当然ながら価格が高くなります。

 

金を含む陶器用絵の具は他にもあり、ピンクや紫にも金が含まれています。しかし含有量で言えばダントツでマロン。

 

他にも赤い色をだす原料としては鉄があり、800度で焼成すると赤い色を出すことができるのですが、しかしこの赤は鉄赤、柿赤といわれ、マロンのような鮮やかさは生まれません。

 

 

食器に使われている金は、本物?

 

 

高級品に多い「金」で飾られた食器......「金使用」と記載されているものの「金」は、ズバリ本物の「純金(*18K〜24Kのものが多い)」です。

 

 

金が近年高騰しているのと話題にあがりますが、食器の絵付けで使用する金も同様。つまり時価により値段が変わります!

 

絵付けの際には、金そのままでは焼き付けられないため、金に添加物を加え15〜40%含金の液状にした「金液」を使います。

 

転写紙の金は、金粉を原料として作られたペースト状の金を使用し、スクリーン印刷したもの。

 

金液も転写紙の金も、柔らかい金属であるため、摩耗され、少しずつはげていくのは避けられません。

 

 

 

 

含金量を見極めるには......?

 

実は、ピカピカに輝いている金ほど、金の含金量が少なく、純度も低いものが多いです。逆に、鈍く深みのある発色をしている金は含金量が多く純度も高いです。

 

なお、陶磁器に銀色を使う際は、鉱物の銀だと安定性も低く黒く変色もしやすいため、青みのある金に少量の白金(プラチナ)を混ぜて作られています。

 

このように、絵付けの仕方や焼成方法も物によって様々。これからは陶磁器絵付けの「色」にもぜひ注目してみてください。

 

 

記事監修・作図:齋藤秀雄

ノリタケの森 アーティストクラブ チャイナペインティング講師(国家資格陶磁器製造技能士1級)

元(株)ノリタケカンパニーリミテド    デザイナー

参考文献:器物語 ノリタケ食文化研究会編 中日新聞社