オールドノリタケの薔薇

軽井沢・塩沢のアンティークショップ ベルリネッタでも人気のオールドノリタケ

 

日本を代表する食器ブランド「ノリタケ」の食器製品は1904年の設立から、アンティークのみならず現代の製品においても世界中で高い評価を得ています。

 

「オールドノリタケ」とは

1800年代の終わりから第二次世界大戦前後まで、ノリタケの前進である森村組と日本陶器で作られた花瓶や置物などの装飾品と食器などの総称です。

 アンティークの世界では「オールドノリタケ」と呼ばれて親しまれています。

 

今日はオールドノリタケの中でもお馴染みの「絵付け」(手描きで器に絵を描く)の薔薇についてご紹介します。

 

いつの時代も人気の薔薇のデザイン。

 

日本の輸出陶磁器でモチーフとして最も使われているのが「花」モチーフであり、その中でも薔薇は中心デザインといわれています。

 

ノリタケの前進である森村組の画帖の中でも薔薇をモチーフにしたものが397例あるそうです。(※①)

特に薔薇は日本の陶磁器の主な輸出国であったアメリカで最も好まれたそうで、アンティークでも薔薇をモチーフにした製品が多く流通しています。

 

 

 

 

先日、当blogでもご紹介した大輪の薔薇とともに金点盛りが施されたこちらのティーカップも人気のデザインです。

>>>ノリタケの金下盛りのティーセット

 

 

 

 

ではオールドノリタケの薔薇の絵付けの特徴をみてみましょう。

 

 

オールドノリタケの薔薇の絵付けスタイルは「アメリカンスタイル」といいます。

 

 

平筆で絵画的で自由な形式で描かれているのが特徴で、グラデーションがわかる面表現や

繊細な光と影の表現、奥行きを感じさせるモチーフの描き方です。

 

 

マイセンやドレスデン、セーブルなどの窯の絵付けは「ヨーロピアンスタイル」と称されます。

 

スタイルの違いは薔薇の絵をご覧いただくと、違いがわかりやすく見てとれます。

 

 

オールドノリタケで用いられている「アメリカンスタイル」の薔薇は

面の大き目の平筆でやや粘度のある溶剤で溶いた絵付け用絵具で色を重ねて描いていきます。この描き方は比較的短時間で描け、少ない焼成行程(窯で焼く工程)で仕上がります。

 

この描き方のスタイルは絵画的であるという表現の違いだけではなく、美術工芸品としてではなく、産業工芸品として欧米への需要に対応し輸出をしていったノリタケの発展には欠かせない描き方といえます。

 

 

オールドノリタケのパターン化されていない自由な様式の美しい薔薇には画工たちの存在があります。

 

パターン化されてない絵画的な表現ほどデッサン力や表現力が必要です。

 

開花している薔薇は形態を捉えるのが難しく、花びらの表現も花の中では複雑です。

 

戦前の日本国内で優秀な美術家や工芸家に与えられる顕彰である帝室技芸院の会員の河原徳立(かわはらのりたつ)(※②)をはじめ、廃藩置県以前に各藩で絵師として名をはせた有名日本画家も多く絵付けに関わったとされています。

 

オールドノリタケの西洋の模倣の枠にとどまらない、海外のコレクターをも魅了する表現や製品力の高さはその方々の功績によるところが大きいのかもしれませんね。

 

当店にはオールドノリタケの他、マイセンやドレスデンなど様々な窯元のアンティーク食器のご用意がございます。

薔薇の絵付けのスタイルの違いなどをご覧いただきながら、アンティークの世界をお楽しみください。

 

 

 

 

 

参考文献

※参照①

明治デザインの誕生ー調査研究報告書「温知図録」

※参照②

ノリタケミュージアム収録品公式図録 171頁